オーストラリアを代表するピノ・ノワール生産者であるバス・フィリップのフィリップ・ジョーンズ氏が、2020年の引退に伴い、ワイン造りの師弟関係にあったジャン・マリー・フーリエ氏(左から2番目)へすべてを託しました。
BASS PHILLIP WINES バス フィリップ ワインズ
設立/1979年 Leongatha, Gippsland(レオンガサ、ギップスランド)
オーナー・ワインメーカー(醸造責任者)・ヴィティカルチャリスト(ブドウ栽培責任者)/1979~2020年 Phillip Jhones(フィリップ ジョーンズ) 2020年~ Jean Marie Fourrier(ジャン・マリー・フーリエ)
バス・フィリップは、1979年にフィリップ・ジョーンズ氏によってオーストラリアのヴィクトリア州ギップスランドに設立された、オーストラリアを代表するワイナリーです。ブルゴーニュの巨匠アンリ・ジャイエ氏のワインに魅了されたフィリップ氏は、自社の畑に植えられていたボルドー品種を全て抜き、ピノ・ノワールに植え替えました。これは当時、誰も成し得なかった挑戦であり、オーストラリアのピノ・ノワールが世界で評価される礎を築きました。
その徹底した完璧主義は、収量制限、手摘みによるブドウの厳選、自然酵母による醸造など、細部にまで及びます。一切の妥協を許さないワイン造りから生み出されるワインは、その類まれなる凝縮感と複雑性、そして熟成による圧倒的なポテンシャルで「南半球のDRC(※)」と称賛されるまでになりました。
(※)「南半球のDRC」とは、フランス・ブルゴーニュ地方の「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ (Domaine de la Romanée-Conti)」を指しています。このワイナリーは、世界で最も高価で、入手困難なワインを生産していることで知られており、ピノ・ノワールの最高峰とされています。
フィリップ・ジョーンズ氏の功績は、単に優れたワインを造っただけではありません。彼は、オーストラリアという新世界で、ブルゴーニュのグラン・クリュに匹敵するような繊細で力強いピノ・ノワールが生まれることを証明しました。
ブルゴーニュへの強い情熱:
アンリ・ジャイエ氏から受けた影響は絶大で、彼の哲学である「自然の力を最大限に活かす」という考えを自身のワイン造りに取り入れました。
妥協なき品質追求:
困難な年でも、基準に満たないブドウは最大30%も破棄するなど、品質へのこだわりは徹底していました。
オーストラリア・ピノ・ノワールの先駆者:
当時、オーストラリアのワインといえばシラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンが主流でしたが、冷涼なギップスランドのテロワールを信じ、ピノ・ノワールの可能性を切り開きました。
2020年、フィリップ氏が引退するにあたり、ワイナリーはブルゴーニュの名門ドメーヌ・フーリエの当主、ジャン・マリー・フーリエ氏に引き継がれました。フィリップ氏とフーリエ氏は、古木の重要性や、テロワールを尊重した自然なワイン造りなど、共通の哲学を持っていました。この世代交代は、オールド・ワールドとニュー・ワールドのトップ生産者が融合するという、世界的なニュースとなりました。
フーリエ氏は、フィリップ氏の築き上げた遺産を尊重しつつ、栽培から醸造まで、自身の哲学を反映させています。これにより、バス・フィリップのワインは、フィリップ氏の時代から変わることのないテロワールの表現に加え、フーリエ氏ならではのエレガンスと繊細さが加わり、さらなる進化を遂げています。新たな体制で造られるワインは、世界中のワイン愛好家から熱い注目を集めています。